ハノン第60番~不可能が可能に~

2019年7月24日

朝霞市・新座市Sumiピアノ教室です。こんにちは。

前回はハノンの目的についてお話させて頂きました。記事はこちら
当教室では、ハノンの導入は小学校低学年~中学年を目安にしています。勿論個人差もあり、ハノンを導入しない生徒さんも居ます。

かつて私が子どもの頃は、全音版の全訳ハノンをフルバージョンで弾かされました。当時は子ども用に編集された可愛い表紙で大きな音符で印刷されたハノンが無かったので、それが当たり前でした。もしかすると当時も子ども用ハノンは有ったのかもしれませんが。

当教室HPのAbout bodyworkを是非お読み頂きたいのですが、幼いころからの積み重ねを軽視しては絶対にいけません。目の前に居る子どもの5年、10年、20年後に痛みと苦しみが待っているとしたら??想像しただけでも胸が痛みます。

全訳ハノンは60番まであります。最後の60番は楽譜を見ただけでも後ろにバタンッと倒れてしまいそうになります。これが全6ページ。小学生の頃から時折思い出しては60番の演奏を試みたものですが、最初の2~3小節弾いただけで前腕に痛みが出て先に進めませんでした。こんな練習曲が世の中に存在する意味が皆目分からなかったものです。どんなマゾか!と。

このたび、そのようなことを思い出し、楽器と身体の快適なコネクトについて研究をしている今の私だったら弾けるだろうか?と、この60番にトライしてみました。

結果

最後までテンポで演奏できました。当然と言えば当然なのですが、当時の自分から見れば超絶なミラクルです。演奏する時の余計な力みを正しい形でリリースする、そんな発想が当時の自分にはありませんでしたし教わったこともありませんでしたから。また当時は知る由もなかった60番の和声進行も今なら分析することができます。不可能が何十年もあとに可能になることもあるのです。

でも、しかし、but、積極的に演奏したい曲では無いですね←という考えを見透かされているかの如く、ハノンの巻末には“この本一冊60番まで全部弾いても1時間、この程度の練習は毎日続けてなんぼ、決して大げさ言うてるのとちゃいますで”とあります。

…。