袖触れ合うも…?!
行く先々で様々な知り合いとバッタリ行き会うことが続いていた時期がありました。
それは何十年ぶりの再会であったりすることも。
昔の知り合い、現在進行形の知り合い、学部時代の先生方、そして個人的な知り合いではありませんが、ここに音楽家と遭遇編も加えたいと思います。
副都心線が開通する前の渋谷駅なので、かれこれ10年以上前になりますが、東横線を降りて改札に向かっていると、向こうからやって来る一柳慧さんとすれ違ったことがありました。重力を全く感じない、地面から5㎝位浮いているのではないかという位に軽やかに風のように通り過ぎて行かれました。その瞬間、頭の中で「ピアノメディア」がON。
もうお一方は新宿駅で山手線を降りて地下の西口改札に向かっている時、柱の陰からスー…と目の前に藤井一興先生が。ほんの短い時間ではありましたが、メシアンの高弟であられた藤井先生の真後ろをついて歩く形に。なんと名誉なことでしょう…!人込みの中でフッ…と先生のお姿は消えてしまいました。
音楽界に素晴らしい足跡を残された二人の音楽家は、ともに鬼籍に入られてしまいました。
演奏会に出かけると様々な音楽家をお見掛けすることは少なくありませんが、特に街の中での出会いは、天上人のような音楽家も同時代をともに生きている人間同士であるということを烏滸がましくも喜びに思うのでした。
今は亡き作曲家たちも、かつては、この世に生きて今の我々と同じく泣いて、笑って、怒って、悩んで、苦しんで、ごはんを食べて生きていたということです。そんな人生の中から生まれてきた作品の数々に感動を覚えるのです。作品の命は永遠に生き続けるということに。